「い、いけたか?」
「ん…もうちょっと…よいしょっ
っ!かたい!」
「相当古ィからなここ
うぅ…お前重てぇな、くそくそ!」
「あー、女の子にそんなこと言うなんて失礼だよ、がっくん!」
「がっくん言うな!」
埃っぽい箱の中に手をつっこんでガタガタと中をさぐる
肩車をされている足場はグラグラとおぼつかなく、は気持ちが焦った
「ん?これ…」
「あったか?懐中電灯!」
「うーん…暗いからわかんないや…」
「よし、一回降ろすぞ」
「うん」
無機質なそれを手探りで捻ると運良く光がついた
「やった!」
「よっしゃ!これでマシだろ」
「うん!がっくんの顔見える〜」
「だっっ擦り寄るな!」
かくして岳人&のチビチビコンビはアイテムの懐中電灯をGETした!
ジャンプッ!!
「よし、これで話しやすくなったな」
「そうだね」
「よし、宍戸妹。そのシャーペン貸せ」
「はい」
胸のポケットにさしてあったシャーペンを渡すと、
向日もまたジャージのポケットからくしゃくしゃの紙を取り出した
「向日…岳人っと。ほらよ」
「わぁ!ありがとう!」
のポケットにはこれで2枚の推薦書
芥川のときと同様にシワを伸ばす
「ね、がっくん」
「お?」
「がっくんは、どうして私を信用してくれるの?」
一瞬、懐中電灯の光が途切れたように見えた
ガツン、と一発かますと正常になる
向日はこっそりと殴った方の手を摩りながら小さくうなった
「なぁ、これ貰うの俺が初めてか?」
「ううん…ジロちゃんが…」
「ジローか…あいつは何でも通用すっからなぁ」
不思議そうなの視線に目で笑ってから、壁にもたれた
どこから言うべきなのか、イマイチ掴めない
「ちょっと前にも、居たんだよな。お前みたいな奴」
「マネージャー志望の子?」
「うちの部は跡部のせいで志願者多いけどな
でももっと前は全部監督が採用してた
けどさ、監督のそのやり方に張り合ったやつがいたんだよ」
とんとん、と記憶を掘り起こすように頭を突いて向日は続けた
「俺らとタメの一年でだぜ?
そいつはチビで鈍くさくてさ
一度食わされた差し入れクッキーはタイヤ味だし!」
「タイヤ食べたことあるの?がっくん」
「た、例えだろ!」
「でも俺、あの時のあいつの目つきとか言葉とか、
今でも忘れられないんだよな…」
「ふーん…」
ちらりと横目で見ると、には向日が悲しそうな表情をしているように見えた
しばらく見つめて三角座りした膝に顔を埋めたとき、
弱弱しかった懐中電灯の光が消えた
特に声も上げなかったのは、お互いこんな雰囲気だからか
それとも最初からこうなるとわかっていたからか
「がっくんは、その人のこと…好きだったんだね」
「……かもな。
でもあいつは跡部が好きだったし
…跡部は、最終的にあいつを酷ぇやり方でふったんだ
あいつがどんだけ想ってたかも考えねーで…
親の都合で転校って言ってたけど…跡部のこともあったんじゃねぇかな…」
の中の怒りのボルテージが少しずつ上がっていった
やはりあの性根の悪さは昔からのものらしい
「がっくん、あのね…」
「っ、なんか聞こえねーか?」
「え…?…………あ!」
遠くの方から声が聞こえてくる
次第に近づくそれは宍戸のものだった
「やったな、ほら兄貴が…」
「お兄ちゃん!お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃーんっ!!!」
「お前はそういうとこがすげぇよな…」
が力の限り叫び、扉を蹴りまくった甲斐あって、二人は無事見つけられた
「宍戸妹」
「うん?」
「俺、多分あいつの続きが見てぇんだ…
今はそれしか言えねーけど、」
「いいよ、私がそのうち、がっくんがこっち見てくれるようにするもん!」
「…ははっ、楽しみにしてるぜ!」
帰り道
兄の背にもたれ、ポケットの中に畳んでしまった紙を確認しては呟いた
「いつか私を見てくれればいいよ…」
小さなそれは自転車の音にかき消され、
茜色の空に溶けていった
あとがき
がっくん編おしまいです
ちょっとだけ過去のテニス部が明かされましたね
がっくんはきっとその子に初恋だったんだろうなぁ…